Column

4歳の壁

以前、私が年中の担任をしていた頃の話です。

ランチルームで女の子達と一緒の席でランチを食べていました。

お皿を持たずに食事をするAちゃんに、「お皿をもって食べようよ」と声を掛けました。

すると、「だって重いんだもん…ねぇBちゃん、ねぇCちゃん、ねぇDちゃん」と、そのテーブルに

座っていた全員のお友達に同意を求めたのです。

その後、口に入っている状態でおしゃべりしているBちゃんに、「お口の中の物がなくなったら話そうね」と声をかけると、隣のCちゃんが私の顔を見て、笑いながらわざと口を大きくあけながら食べ始めました。

また、部屋で遊んでいる時、子ども同士の会話の中で「Eちゃんって本当にお笑い芸人みたいだね~

アハハ」。

それって褒めているのか何なのか?大人が聞いているとヒヤヒヤするような会話が聞こえてきました。

Eちゃんの顔を見ると少しムッとしています。

その他、さっきまで子ども達同士で仲良く遊んでいたかと思えば、いきなり誰かが泣き始めて「先生~

○○ちゃんが△△って言った~!」などのやりとりは日常茶飯事でした。

4歳前後は言葉の敏感期でもあります。

いい言葉も、そうでない言葉も何でも吸収する時期ですが、言われて嫌なことの判断はまだつきにくい年齢です。

それは人間関係や社会性など、まだまだ経験が少ないからだと言われています。

さて、「4歳の壁」という言葉を聞いたことがありますか?

この時期は、大脳の発達にともなって認知能力が大幅に向上するそうです。

それは時間や空間を認識する、自分と他人との区別がつく、他者の気持ちを理解する、といった部分に

あらわれます。

しかしながら、これらの認識はある時、突然完璧なものになるわけではありません。

4歳児であっても今までに得た知識や情報を駆使しながら、不安や戸惑いも感じつつ成長しています。

この成長過程において、自分の感情がうまくコントロール出来ないことも多々あります。

大人からすれば、口答えをしたり、好ましくない言葉を使ったり、小さな嘘をついたりすることも多く

なり、気になる時期ではありますが、4歳児ならではの成長の証です。

このような変化が起きている状況を考えると、お友達とのトラブルが多いことも納得できます。

子ども達は日々上記のようなやりとりをしながら、言われたら嫌なこと、言ったら相手に対して失礼なこと、を教えて貰ったり、さまざまな場面で学び、使い分けていきます。

子どもは「知らないだけ」なので、私達大人は必要なところで正しい言い方や、言葉を伝えたいもの

ですね。

保育園でも「それを言われたら嫌な気持になるよね」「○○って言ったらいいんじゃない?」など、

丁寧に知らせるよう心掛けていきます。                  (中川)