~ケンカ体験はたからもの!?~
保育園は子ども達が生活する社会であり、そこには家族とは違う他者との関わりが多くあります。
開園して3ヶ月が過ぎ、園にも慣れてきた子ども達は友達の名前を覚えて一緒に遊んだり、さまざまな場面で子ども同士のかかわりが多く見られるようになりました。
かかわりが増えれば増えるほど、遊び中で、時には自分の思い通りにならないことや意見が合わないこと、順番を待つことなど、我慢をすることも出てきます。私たち大人は「ケンカをしないで思いやりをもってほしい」「相手の気持ちがわかる子に育ってほしい」と願っていますが、それらの感情もさまざまな経験(プロセス)を経て学んでいくのです。
まず、0~2歳は自分という人間が“自分らしくいれる”ということが保証されることが重要で、この時期が人間関係の基盤となります。
最初は大人が「このおもちゃは○○ちゃんが使ってたね」と仲立ちしてくれ、自分が使うものを守ってもらえます。この守ってもらえる時期に自分が満たされた経験を十分にすると、次は相手のものが欲しくなり、おもちゃの取り合いなどが始まります。この時に大人は「人のおもちゃをとることはよくない」と仲介に入ります。しかし、いつも大人の仲介がうまくいくとは限りません。取り合いになって自分の思い通りに事が運ばないことがあったり、時にはたたかれたりすることもありますし、『ほしいものが手に入らない』こともあるでしょう。
しかし、このような経験から『世の中うまくいくことばかりではない』ということを子ども達は知っていくのです。 すると…『次はどう交渉していくか』『どうやって一緒に遊ぶか』を試行錯誤していくようになっていきます。
保育園でも子ども達は、おもちゃの交換を提案してみたり、一緒に使う方法を考えたり、自己主張をしてみたり…さまざまな方法で知恵をだして関わる姿が見られます。
そのような経験を積み重ねると、徐々に相手の気持ちを考えて自分の想いを伝えたり、順番を決めてルールを設定するようになっていくのです。
3歳~5歳はコミュニケーションを学ぶ年齢
一対一のコミュニケーションが多い3歳では、まだまだ『とった』『とられた』ということが多くありますが、4歳になると三者関係になるなど、人間関係は複雑になっていきます。女の子だとコソコソ話をして友だちに聞かれないようにしたり、「○○ちゃんとあそぶからあそべない」というようなこともあります。男の子も同様に「このあそびは○人でする」というように、傍から見ると意地悪に見える行動をとるようにもなります。
しかし5歳になると「○○ちゃん(くん)はなんで××っていうの?それが嫌だよ」というように理由を相手に伝えたり、こまかいニュアンスも言葉で伝えられるようになっていきます。言葉でのやりとりが増えるので言葉のトラブルもありますが、相手の気持ちを考えてどうすればいいかを考えられるようになり、解決方法を提案しながら話し合いをする力もついていくのです。
このように年齢によって“ケンカ”の内容は異なりますが、その時々の経験が後のコミュニケーションや人間関係を形成していく大きな財産となります。5歳になったら自分の考えを急に言えるようになるのではなく、小さな出来事・経験の積み重ねがあって、初めて他者と円滑な関係を築いていく力が育っていくのです。
このようにケンカをすることが決していけないことでありません。その経験は子どもが成長していく過程では必要なことです。年齢によっては大人が仲介に入ることが時として妨げになってしまうこともあるので、時には見守りながら、一人ひとりの性格を見極めて、年齢の育ちに合ったかかわりを心がけています。
今年度の園テーマでもある『SMILE~思いやり~』・・・各クラスでもこのテーマを取り入れながら、さまざまな経験・体験を通して思いやりを育んでいきたいと思います。
また、もうすぐプール活動に夏祭りも始まりますね。季節の中で感じられる感性も大切にしながら、
子ども達の経験を豊かにしていきます。
(北嶋)