ひとりでするのを手伝ってね
~ ひとりでするのを手伝ってね~
ある日の夕方、カモミールでAちゃんが「落とす」お仕事をしていました。
小口の瓶にプラスチックの鎖を落とそうと何度も挑戦するのですが、鎖を持った手を
瓶の口にそのまま持っていくので入りません。
①そこで違う鎖を手に取り「見ていてね」と伝え、手で下げた鎖の先をゆっくりと瓶の口に差し込む様をやり、②次に手を離すと鎖がするっと瓶に入る様子を見せました。
それを見たAちゃんはケラケラと声を上げて喜び、もう一度やってと鎖を渡してきたのです。同じことを何回か見た後に自分で挑戦を始めましたがなかなか鎖の先が瓶に入りません。やり方は分かったのですが自分の意志に反して手が上手く動かないのです。そこで少しだけ手を添えてあげると今度はするっと鎖が入り、Aちゃんは満足そうな顔をしながら手を叩いて喜びました。繰り返して遊ぶうちに、今では難なく目指す瓶の口に鎖を上手に入れて落としています。
子どもは1歳を過ぎると「自分でやりたい」という気持ちが強くなります。一般的に「自立」というと思春期を迎えた中学生や経済的に一人立ち出来る成人の頃と言われていますがモンテッソーリ博士は『自立の原点は「自分で」やりたくなった1歳児の頃にある』と言っています。自立の第一歩は「自分で自分のことを自分の意志でしようとすること」なのですね。そして五感と手をはじめとした運動器官を使ってさまざまなことを自分のものにしていこうとします。
ところで人間には随意筋と不随意筋の二種類の筋肉があり、随意筋は自分の意志によって動きます。しかしAちゃんのように「自分でやりたい」という気持ちがあっても未発達な随意筋と「○○したい」という意志の連動が上手くいかないのが幼い子どもの常です。そこで、できなかったり失敗してしまうことが多々あるのです。ひとつの筋肉運動が自分のものになるまでに実に2000回ものくり返しが必要だそうです
また子どもたちはいつも「できるための正しいやり方」を求めています。そのための
お手伝いの方法として「やり方を『ゆっくり』見せる」、「『繰り返して』行えるように『見守って』あげる」ことが鍵となります。
自立の第一歩となる「自分でやりたい」という子ども達の気持ちに寄り添って、私達大人がこれからもみんなでお手伝いしていけるといいなと願います。
(矢﨑 さゆり)